日本・中国・韓国・タイ・マレーシア 子ども湿地交流
湿地の学校ネットワーク<ボルネオ編>


011年3月15日〜19日
マレーシア国サバ州サンダカン市
主催:WI中国/サバ州政府(森林局、野生生物局)
共催:WIマレーシア、WIタイ、:WI韓国、WI日本、ラムサールセンター
後援:ラムサール東アジア地域センター(韓国)、セリンガンライオンズクラブ
 3月15日〜19日、マレーシア国サバ州サンダカン市で「湿地の学校ネットワーク<ボルネオ編>」(地球環境基金助成事業)が開催されました。「湿地の学校」はアジアの子どもたちが、湿地の重要性と賢明な利用を学び、国際協力を実践する場を提供する環境教育イベントです。2008年度に中国・広東省湛江、2009年は中国・湖北省武漢とタイ国クラビ湿地で開催されました。
 日本、中国、韓国、タイ、マレーシア、バングラデシュの6カ国から子どもたちと引率者など100名以上が参加しました。日本からは藤前干潟の伊藤優衣歌さん(高2)と吉井友佳子さん(中3)、矢並湿地の杉山賢太さん(高2)、琵琶湖の山本賢樹さん(高1)と日田琥珀さん(小6)、藤前干潟活動センターの戸苅辰弥さん、RCJの中村玲子さん、佐々木優さん、深澤真梨奈さん、大原みさとさん、チェン・ケリンさん(中国会員)、サノワ・ホセインさん(バングラデシュ会員)らが参加しました。
 サンダカンは、ボルネオ島北部のサバ州で2番目に大きな都市で、パームオイル、タバコ、カカオの輸出のほか、キナバル山などの観光が主要な産業として発展しています。2005年に「自然都市」に指定され、ラムサール登録湿地のキナバタンガン川、セピロックオランウータンリハビリセンター、熱帯雨林観察センター、ゴマントン洞窟など、エコツーリズムの拠点となっています。気温は1年中25〜30℃と蒸し暑く、この季節は乾期と雨期の移り変わりの時期で、一日に何度もスコールが降っていました。
 マレーシアの料理は、独特の香りがして、油を豊富に使い、味は辛いものや甘いものが多いように感じられました。マレーシアでは特別な日は食事が6食になり、イベント中は毎日、朝食・午前のティータイム・昼食・おやつ・夕食・夜食とたくさんエネルギーを補給しました。

         キナバタンガン川ラムサール条約登録湿地
 キナバタンガン川はボルネオ島の北東部を流れる、全長560kmの川。ボルネオの固有種のテングザルやカニクイザル、オランウータン、ボルネオピグミーゾウ、サイチョウやカワセミの仲間の鳥など、希少な生きものが生息する野生動物の宝庫です。下流域に広大なマングローブ林がつづき、地元の人々がいまも伝統的な暮らしを守っていますが、周辺の森にはオイルパームプランテーションの開発が迫っています。その下流域の7万8803ヘクタール(琵琶湖の1.2)2008年にラムサール条約に登録されました。



 1日目(3月15日)の夜は、熱帯雨林ディスカバリーセンター(RDC)のホールで自己紹介をしてダンスやアイスブレイクをしました。
 2日目(3月16日)の朝、RDCでオープニングセレモニーがおこなわれました。マレーシアの子どもたちが伝統衣装を着て私たちを歓迎し、地元の子どもたちがボルネオの生きものになりきってするミュージカルを演じました。

 その後、2つのグループに分かれ、午前と午後で違うプログラムに参加しました。一つは熱帯雨林の中に架けられた、25mの高さのキャノピーウォークを歩くプログラムで、RDCのレンジャーから熱帯雨林の動植物や、森の成り立ちについて説明を受けました。この森は一度伐採された土地に、植林をして復活させた森ですが、現在はとても多様性に富み、豊かな生態系を支えていることを実感できました。
 もう一つは、オランウータンリハビリセンターで、森林伐採や密猟などで親を失ったオランウータンの子どもを自然に帰すためのリハビリ活動を見学するプログラムで、間近でオランウータンがサトウキビを食べている様子を観察しました。
夜は、参加した6カ国の子どもたちによる各湿地の活動紹介をおこないました。日本は琵琶湖と矢並湿地と藤前干潟の紹介をおこない、全員が英語で湿地のようす、特色、活動の実際についてプレゼンテーションをしました。
 
伝統衣装で歓迎されました              オランウータンのリハビリのようす

熱帯雨林の樹冠
 
山本賢樹さん(左)と日田琥珀さん          吉井友佳子さん(左)と伊藤優衣歌さん


 3日目(3月17日)は、ボルネオ島を代表する自然である広大なマングローブ湿地を、キナバタンガン川を河口からジェット船でさかのぼって見学しました。マングローブ林で暮らす人々の川の上に建つ高床式の家を訪おとずれ、獲れた魚を使った料理や、魚とり用の網の作り方を教わりました。マングローブ林は村を洪水から守るだけでなく、多くの生きものを育み、それを人間が利用することで生活を支えていることを学びました。マングローブの実が成長していく過程なども教わり、日本の湿地との違いを学びました。
 船の中からボルネオの固有種である珍しいテングザルを見ることができました。
 夜は、子ども会議と大人による各湿地の活動発表をおこないました。子ども会議では、各グループに分かれて、プログラムをとおして学んだことを話し合い、ボルネオの自然と生きものを描いたポスターをみんなで制作しました。そして、国ごとに集まり、学んだことを踏まえ、今後自分たちに何ができるかについて話し合いました。
 
小型のジェット船                     高床式の住居
 
魚を料理する杉山賢太さん              魚をすり身にする地元の人             

キナバタンガン川に広がるマングローブ林
 
ポスター作りのための子ども会議          完成したポスター(一部)


 4日目(3月18日)は、ボルネオ島の生きものを調査・研究しているダナウギランフィールドセンターを訪れました。キナバタンガン川に20個あるという三日月湖の成り立ちの話(蛇行した川が長年の浸食により切り離されて、湖となった)や、オランウータンやボルネオ固有のカエルやワニなどの研究の話を、カエルの実物やセンサーカメラで撮影した写真を見せてもらいながら学びました。
 夜は、各国の伝統衣装を着て、各国の伝統のダンスや歌、武道などを披露して、文化の交流をしました。日本の子どもたちは浴衣やジンベエを着て、「世界に一つだけの花」を全員で歌いました。会場には、踊りや演奏を披露するために、地元の人たちがたくさん駆けつけ、とても盛り上がりました。
 
ダナウギランフィールドセンター           地元の子どもによる伝統の踊り


 最終日(3月19日)は、17日の夜につくったポスターを使い、グループごとの代表が、どんな体験をして、自分たちは何を学んだかを発表しました。国ごとの発表で、日本は山本賢樹さんが代表で、オイルパームプランテーションに対しての印象が変わったこと、つまりマレーシアの人にとって必要不可欠な産業であることや、これからも子どもたちのつながりを続けていきたいという内容を英語で発表しました。
 最後に閉会式で修了書をもらい、5日間におよぶ「湿地の学校」は幕を閉じました。
 
代表で発表する山本賢樹さん       参加者全員での集合写真



参加した日本の子どもたちの感想文もごらんください。


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